春闘とは

 今の時期、春闘という言葉がニュースにさかんに出てきますね。春闘って、何でしょうか。これは春季闘争の略なんです。「給料を上げてくれ」と要求する春の闘いのことです。昭和30年から始まっています。

 日本の大きな会社では、定期昇給といって、毎年4月に、働いている人たちの給料が上がることが多いのです。でも、物価が上がると定期昇給だけでは給料が足りない、という人も多いのですね。中には定期昇給がない会社もありますし。そこで、4月からの新しい給料になる前に、給料を上げてくれ、と要求するのが春闘です。

 給料を上げてくれ、と要求するのも、個人では中々言い出せませんよね。「その給料で不満なら会社をやめてくれ」なんて言われるかも知れないし。そこで、会社の経営者に対して、働いている人たちみんなで仲間になって一緒に経営者に要求しようと作ったのが労働組合です。春闘は、労働組合の闘いなのです。

 労働組合は、「給料を上げろ」と要求するだけではありません。「もっと休みを増やしてほしい」とか「もっと社員を増やしてくれ」などと要求することもあります。でも、一番の闘いは春闘です。
 経営者に「給料を上げろ」と要求しても、「やだよ」と言われることがあります。こういうとき、労働組合が要求を実現するために、ストライキをすることがあります。ストライキというのは、わざとみんなで働かないで、会社の経営者を困らせることです。働かなくては、製品ができないし、仕事も進みません。経営者が困ってしまいます。もちろんストライキは働かないことですから、労働組合に入っている人たちも、その間の給料はもらえません。それだけの犠牲を払っても、要求を実現しようというやり方です。
 このストライキは、公務員には認められていませんが、民間の会社では、権利として認められています。

 でも、たとえば自動車を作っている会社の組合がストライキをしたとします。その会社の製品が作れなくなります。その間に、競争相手の会社がどんどん製品を作って売りに出せば、そちらの自動車がたくさん売れて、ストライキをしている会社は、製品が売れず、経営が苦しくなるかも知れません。そうなると、給料を上げるどころではありません。
 そこで、同じ製品を作っている会社の組合同士は、一緒に闘いましょう、ということになりました。これなら、自分たちがストライキをしている間に、競争相手が製品を作るということがなくなり、安心して闘えるからです。みんなで一緒に闘いましょう、ということですね。みんなですればこわくない、ということ。これが春闘です。よく「団結」というハチマキをしていますが、そういう意味なんです。

 こういう闘い方が広がりますと、今度は、ほかの製品を作っている会社の労働組合とも一緒に闘いましょう、ということになってきます。景気によって、自動車がたくさん売れるときもあればあまり売れないこともあります。電気製品についても、景気によって売れ行きが違ってきます。
 ということは、それぞれ作る製品によって、会社の給料も違ってきます。こういうとき、日本では、とかく「横並び」といって、なるべくほかの人と同じでありたいという気持ちがあるでしょ。そこで、景気のいいところに先に闘ってもらって、高い給料の引き上げ額を決めてもらい、「あそこがあれだけ給料が上がったんだから、うちも、もっと上げてよ」という要求の仕方をするわけです。

 会社のワクを越えて団結するばかりでなく、業種のワクも越えて団結しましょう、というわけです。ですから、毎年、春闘のときには、闘い方を調整します。景気のいい産業の組合の人たちにまず頑張ってもらい、高い給料引上げを実現してから、ほかの産業も要求します。だから、春闘は、年によって、業種によって、引上げの金額が決まる時期が異なるのです。
 例えば電車やバスの組合の集まりの私鉄総連というのがありますが、ここの場合ですと、まず大手の組合が闘争をして引き上げ額を決め、このあと地方の中小の組合が「大手並みの引上げを」と要求します。これも、工夫した闘い方のひとつです。

 ひとりでは弱いけど、みんなで集まれば、強くなれる。これが労働組合であり、春闘なのです。